中原中也と赤い手紙の謎
主要人物
太宰 治
声/岡本信彦
檀 一雄
中原 中也
矢田喜美雄
第五話 赤い洋墨の手紙③
彼女は、まるで何かをこぼさぬように、慎重に言葉を選んでいた。
依頼主
「手紙を忘れたと気づいた瞬間には、もう消えていて……」
檀 一雄
視線を落とし、どこかで何かを堪えているような顔だった。
その様子に、俺は思わず黙り込んでしまった。
隣で太宰がぽつりとつぶやいた。
太宰 治
「誰かが、置き忘れたところを見ていた」
妙に冷静な声だった。状況を切り取るように、事実だけを告げる。
中原 中也
「わかったぞ!誰かが意図的に盗ったってことだ!」
中原は、得意げに口をはさんだ。
太宰がすぐに応酬する。
太宰 治
「口出ししてるじゃないか」
中原 中也
「うるせー!」
檀 一雄
短く言い返した中原は、口をつぐんだ。
なんだかんだ言っても、やはり気にしているのだろう。
俺は彼女に向き直り、できるだけやわらかい声で尋ねた。
「どんな手紙なんですか? 何か特徴は?」
彼女は少しだけ顔を上げた。
依頼主
「はい、赤いインクで書いた手紙なので、見ればすぐにわかるかと……」
檀 一雄
「……赤いインク、ね」
俺はつぶやいた。なぜだか、その色がやけに生々しく頭に浮かんだ。
依頼主
「万が一、誰かに中の手紙を見られたら……私、もう生きていけないんです」
彼女の声が震えた。
その必死さに、中原がふっと鼻で笑った。
中原 中也
「たかが手紙一つで、大袈裟だなあ」
太宰 治
「中也、黙ってろ!」
太宰の声が鋭く飛んだ。珍しく怒気が混じっていた。
檀 一雄
「この手の事件は、感情の裏に“嫉妬”や“恐れ”が隠れてる。……太宰、どう思う?」
太宰 治
「うん、面白い。桜桃探偵舎、始動とするかね」
太宰が口元をほころばせながら答えた。
冗談のようでいて、その目は本気だった。
彼女は深々と頭を下げて、こう言った。
依頼主
「どうか、よろしくお願いいたします」
話一覧
-
第二章中原中也と赤い手紙の謎
ここまでのおさらい
-
依頼主
いらいぬし手紙の特徴を伝え、誰かに見られたら生きていけないと怯えた。
-
太宰 治
だざいおさむ依頼主を鼻で笑う中原を怒り、本気で「桜桃探偵舎」の始動を宣言した。
-
中原 中也
なかはら ちゅうや手紙が盗まれたのだと得意げに推理した。
-
檀 一雄
だん かずお状況から、手紙の盗難の背後には「嫉妬や恐れ」が隠れていると推理した。
